研究室の紹介
私たちの研究室を紹介します。
まず、ホームページに掲載している公式の見解を申し上げますと以下の感じです。小児思春期発育研究部の目的は、小児期、思春期、さらには成人期において発症しうる内分泌関連疾患の分子遺伝学的解析を行い、その成果を医療のみならず社会全体に還元することです。特に、成長障害、性分化異常、生殖機能障害、およびこれらに関連する先天奇形症候群や染色体異常症を主たる研究対象とし、その病態を単一遺伝子疾患と多因子疾患の両者の観点から解析しようとしています。そして、単一遺伝子疾患の観点では、新規原因遺伝子の発見、疾患成立機序の解明、遺伝子型-表現型解析による臨床像の解明、迅速かつ正確な診断法の確立、原因療法の適正化、新規原因療法の開発を、多因子疾患の観点では、疾患感受性遺伝子多型、環境反応性遺伝子多型、薬剤応答性遺伝子多型の同定と、それに基づく疾患発症機序の解明、社会環境の評価(内分泌撹乱物質など)、対症療法の適正化と重篤な副作用の回避を目指しています。
上記はともかく、当ラボの特徴として、2つが挙げられるように思います、第1は、名前を聞いても何をやっているのかよく分からないことです。まず、国立成育医療センターという名前で病院や研究所を思い浮かべる人は少ないようで、初めてのところに電話して名乗っても、ハアー?というご返事が結構多いですし、障害をもった方達のケアセンターというイメージをもつ人も多いようです。さらに、小児思春期発育研究部というと精神保健的な仕事をしていると思われる方も多いようです。これは、逆に何をやってもいいのかなあと利点かもしれません。ちなみに、英語表記は、Department of Endocrinology and Metabolismで、ストレートに内分泌・代謝となっています。私たちの目標としては、「分子内分泌研究部」Department of Molecular Endocrinologyがしっくりきます。
第2は、生殖機能については、研究よりも実践が先行していることです。写真をご覧になって分かるように若い女性ドクターが多く、私が赴任してからの3年間で6名のメンバーが妊娠・出産しました。とてもハッピー?!なラボです。なお、ラボメンバーは15〜20名くらいで、その数、勢い、どこからみてもfemale-dominant worldです。
私たちの研究テーマの1つは、性差です。これは雑駁に以下の用に集約されます。
性分化:一言でいうと、ヒトの原型は女であり、これに複数の因子が作用すると男になります。未分化性腺は、Y染色体が存在すると精巣になり、存在しないと卵巣になります。性管・外性器は、精巣由来の男性ホルモンが働くと男性型に誘導され、男性ホルモンがないと女性型になります。脳も同じで、男性ホルモンが働くと男の脳に、働かないと女の脳になります。何と険しき男への道。言ってみれば、女性は生の餅米で、男は蒸して、搗いて、包んでアンコをいれた餅のようです。
知能:知能障害は、男において女よりはるかに高率にみられます(これは、平均知能における女性優位を意味するものではありません、念のため!)。この理由は、X染色体上に非常に多数の知能障害遺伝子が存在することにあります。これらの遺伝子は、男では1個しかないために遺伝子変異が直ちに障害を引き起こすのに対し、女では2個あるために1つの遺伝子が変異してもスペアがあるため障害を生じにくいことになります。
身長:男が女より高身長であることはよく知られています。これは、女が巣を守り男が外で餌を取ってくるという長い進化の過程で男が獲得した形質と推測され、ヒトではホルモン効果よりもY特異的成長遺伝子の効果が主体です。これは、幾多の性分化遺伝子の作動を必要としながら、なおも知能障害の危機に瀕する男に対する神の恩恵のような気もします!?
この性分化・生殖機能について、当ラボにおける現在のホットな話題は、新規性分化遺伝子が同定できたこと、内分泌撹乱物質感受性ハプロタイプが判明しつつあること、無精子症遺伝子をきわめて狭い遺伝子範囲に限局できていることです。これらは、最終的にどうなるか分かりませんが、ラッキーに期待しつつ、楽観的かつ真摯に努力していきたいと思っています。
最後に、当ラボはヒトの解析が主体で、多くの臨床ドクターにお世話になっています。ここで、お一人ずつ名前を挙げるスペースはありませんが、この場を借りて、厚く御礼を申し上げたいと思います。また、興味のある症例など、ご連絡いただければ大変嬉しいですし、ちょっと実験に来られるのも大歓迎です。
何かありましたら、下記にご連絡いただければ幸いです。
E-mail:tomogata@nch.go.jp
電話:03-5494-7025
ファックス:03-5494-7026
|